個人に関わる情報を不用意に公開すると攻撃の材料にされる危険がある
「個人の情報」と言っても何やら漠然としていますね。もう少し考えてみましょ うか。
先程からの話をもう一度読まれるとお分かりかもしれませんが、個人情報と
一口に言っても、実は、
に分けることができます。もっとも、この二つの間に明確に線を引けるとは 限りません。例えば、家庭や職場での行事……旅行とか食事に出かけたとか…… に触れた場合、それは同行した人達の情報に触れていることにもなるわけです。
しかし、情報を露出された側にとって、この二つの意味は大きく異なります。 本人に関する情報の露出は(うっかりしたミスなどを除いて)常に本人の知る ところですが、関わりのある誰かの情報を露出した場合、露出されたその人自 身がその事実を知らない場合が多いわけです。つまり、
本人の全く知らないところでの記述によって攻撃を受ける危険性
があるわけです。
以下に、個人情報と考えられる項目と、それを公開した場合の影響について 考えてみましょう。
もちろん、匿名でページを所有するのは簡単なことですし、そうしている方 は大勢おられます。しかし、匿名で情報公開をするということは(実像として の)自分自身が情報発信者としてふるまうことができないことを意味します。 匿名で攻撃してくる者に匿名で対抗するのも一手段ではありますが、それが完 全に攻撃の危険性を解消してくれるわけではありません(network 以外のソー ス……人伝てに聞くとか……からその実像を知られる可能性もある)し、発言 に対する実像としての自己の負う責任を忌避している「正体の知れぬ信用でき ない者」という点において、その存在は攻撃者のそれとある意味で同じ要素を 持っているのですから。
第三者の実名についてページ上で触れるのは、やはりある程度のリスクのあ
る行為だと思われます。先に書いたとおり、実名は個人情報へのアクセスの第
一歩ですから……
これらの全てが満たされている場合に限定するのが、一番安全だと思います。
ひとつ注意すべきなのは、実名と居住地が明らかになると電話番号を調べる ことができる、ということです。電話番号をハローページに掲載している方は、 NTT の検索サービス や、名簿情報検索のための CD-ROM 等を用いて簡単に番号検索ができてしまい ます。また、そのものずばりの、
http://www.cisnet.or.jp/home/fukuoka/
このようなビジネスもありますので、特にこの点に注意した方が安全だと思い ます。
そして、これはいずれの場合に対しても言えることですが、たとえ明確な地 名を記述していなくとも、近所の様子や大きな建物(工場や店、ビルなど)と の相対関係などからも住所は特定できてしまいます(表札で苗字を確認すれば いいだけの話ですから)。こういう記述も「市区より細かいレベルの情報」に 属するということを、老婆心ながら付け足しておきます。
携帯電話や PHS の場合は、有線の場合よりも悪戯に対処しやすいと考えら れますし、電話帳のようなものは目下ないようですから、住所の判明する危険 性は少ないと考えられます。しかし、悪戯によって、本来の用途に障害を来す 可能性はもちろんあるでしょう。
メールアドレスを公的目的のものと私的なものに分けて使っている人が最近 は多いのではないかと思います。公的には企業や大学のアドレス、私的にはプ ロバイダのアドレス……というのがよくある例ですね。
このような使い方をされる方の場合、他人にメールアドレスを教えたくない (自分の教えたい相手にだけアドレスを教えたい)ということがありえます。 ですから、他人のメールアドレスを WWW ページ上に書く場合も、その持ち主 がそれを公開しても問題ないのか、それとも公開したくないのか、を必ず確認 すべきものと考えられます。
また、WWW とは直接関係ありませんが、複数の人にメールを送付するときに 生じる「メールアドレスの列記の問題」というのがあります。
メールを複数の人に出すときには、その全ての送り先のアドレスを列記する ことになるわけですが、To: フィールドや Cc: フィールドに列記している例 をしばしば見受けます。これは、そのメールの全ての送付先に、複数の人のメー ルアドレスのリストを送りつけているのと同じことなのです。
もし複数の人(そしてその人同士の面識がないなどの理由で送付先を秘匿す べき場合)にメールを送る場合は、必ず送付先を Bcc: フィールドに書くべき です。BCC は Blind Carbon Copy の略で、送付先には送付先アドレスの見え ない状態で届くようになっています。
大学生が、network 上でマナーを守らない人物に関する批判的な記述をコンテ ンツ上で展開したところ、その人物から大学当局に苦情申し入れがなされ、ペー ジ内の記述、更新に関して制限を課せられる結果となった
というようなことが実際ありました。また、所属機関における守秘義務に抵触す るような記述をする人もしばしば見受けられますが、これは当然論外です……
また、そこここで見かける「家族の写真」ですが、これは大変危険なもので あると思われます。例えば、あなたがアメリカに住んでいて、御自分の子供の 写真を掲載したとしたら……それは kidnap (幼児誘拐)してくれと言ってい るようなものなのではないでしょうか。実際に物理的に攻撃されるかどうかは 別として、家族への攻撃をほのめかすような脅迫の材料として、そのような写 真が使われる可能性は大いにあるのではないでしょうか。
今後の行動に関する具体的な予定に言及するのも問題があると思われます。 家族旅行の予定とか、食事に行く予定などですね。例えば、
network 上の仲間数人でオフラインミーティングをすることになり、その店の 名前、場所、時間について WWW で告知していたところが、あまり良好な関係 でない network 上の知人が同じ時間に同じ店に来ていたらしく、オフミでの 出来事を揶揄するような内容の記述を公開された。
というような例があります。
に関しては、それを公開する前に、その公開によって自分やその周囲に及ぶ影 響を考慮する必要があると考えられます。