渡辺 温

ひょんなことから、渡辺温の作品群が青空文庫収録されているのを発見して、夕食後の時間は何本かの短編(といっても、渡部温は短編しか残していない)を読んでいた。

実は今日まで、僕は渡辺温が自分の母校(旧制水戸中学校、現在の茨城県立水戸第一高等学校)の大先輩だということを知らなかった。それに、誕生日も僕と一日違いだ。いや、これは本当に知らなかった。それを知らずに、自ら探すわけでもなく、たまたま青空文庫の作品群に行き当ったのは、これは何かあるのだろう……というのは考えすぎかもしれないが、でも、そう思いたくもなろうというものだ。

渡辺の作品は、ときに陰惨であり、残酷であるけれど、でもそれらに現実の生々しい臭いを感じさせない。幻想的であって、そして短編しか残されていない彼の作品の多くは、呆気無く終わる。妙に乾いている。普通ならねとりと糸を曳きそうな愛憎が、まるで乾燥した老廃物のようにはらりと剥がれ落ちる。そんな感じだ。

27歳の若さで、夙川の踏切(阪急神戸線だ!)で事故に遭いこの世を去った彼より、今の僕はもう一回りも齢をとってしまっているけれど、この機に渡辺とネット上で邂逅を果たしたことに、偶然を越えた何かを感じて、どうも眠れずにいる。こんな気持ちになるのは、もう何年ぶりのことだろうか。

落武者、貞子、断髪

この一年近く、実は髪を伸ばしていた。丁度、昨日保釈された押尾某:

釈放された押尾某

よりも少し長い位まで、肩を覆う位まで伸びた髪を、時には後ろで束ねながら過ごしていたのだけど、U にも「いい加減に切ったほうがいい」と忠告され、とうとう今日の昼間に思い切って切ることにして、近所の美容室に入った。

この美容室には今までにも何度か来たことがあったのだけど、今日は初めて(そう、初めて!)ヘアカタログを渡された。うーん……ショート気味のさっぱりしていそうなのを選んで、まあこんな感じで、と告げて、カットが始まった。

なにせ長いので、クリップで留めては切り、また留め直しては切る、を繰り返す。

「しかし伸ばしましたねえ」
「ええ……まあ、伸ばしたというか、伸びてるというかね……」
「で、今日切ろうと思わはったんですか?」
「ええ。しかし……どうせなら夏前に切りゃあいいのにねえ」

というと、美容師の女性のツボにはまったらしく、しばし笑い。

「夏、大変でしたねえ。でも、せっかく夏越えたのに、切っちゃうんですね?」
「ええ。なんか、落武者みたいに見えてきてね」

これが再び美容師の女性のツボにはまったらしい。

「ワタシも貞子って言われるんですよ」
「貞子?あー、前髪で顔が隠れる?」
「そうなんですよ。ワタシ、前髪長いんで。でも……落武者って。それはひどい」

山下達郎が自分で自分のことを落武者と言っていることは、山下氏の名誉にかけてここでは言わなかったけれど、かくして、落武者の髪を、貞子はばっさりと切り落としたのだった。

ようやく提出

ようやく提出した。国勢調査の調査用紙を。もう何日も前に書き終えていたのだが、どうも家を出る時に持つのを忘れてしまう。要するに、自分にとっての優先順位が低いということだろう。

しかし。国勢調査の用紙を出さずにいるのは、法律上はよろしくない状態である。というのも、統計法という法律があって、以下のような規定があるのだ:

(報告義務)
第十三条  行政機関の長は、第九条第一項の承認に基づいて基幹統計調査を行う場合には、基幹統計の作成のために必要な事項について、個人又は法人その他の団体に対し報告を求めることができる。
2  前項の規定により報告を求められた者は、これを拒み、又は虚偽の報告をしてはならない。
3  第一項の規定により報告を求められた者が、未成年者(営業に関し成年者と同一の行為能力を有する者を除く。)又は成年被後見人である場合においては、その法定代理人が本人に代わって報告する義務を負う。
第六十一条  次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
一  第十三条の規定に違反して、基幹統計調査の報告を拒み、又は虚偽の報告をした者
この間、池上彰の番組で、国勢調査に回答しなかった者には懲役刑が科されることがある、と言っていたらしいが、それは間違い。提出を拒んだり、虚偽の内容を回答した場合には、上のように五十万円以下の罰金刑が科される……とは言っても、実際にはこれが科されることはないのだけど(調査員が周囲からの聞き取りを行って提出することが認められている)。

今年は、東京都ではインターネットでの回答が試験的に行われたそうだが、早いところ全国規模にしてもらいたいものだ。あれ程(前)総務大臣が、馬鹿の一つ覚えのように「光の道」「光の道」って言ってるんだから、既存のメタルのインフラ込みでもシステムを早いところ回していただかないとねえ。しかし、民主党政権はそういうことをちゃんとやらないんだけど。

教科書にのせてほしくない!

TBS 系列で今日の午後九時から放映されていた『教科書にのせたい!世界のナゾ&神秘現象大解明スペシャル!』という番組を観ていたら、イメルダ・マルコスの半生に関する話に触れていたのだが……なになに、「ペグニノ・アキノ暗殺」?

うーん……外国人の名前とか、外国語の単語に言及するとき、言い間違いがないかどうか原語の綴りでチェックするのは普通のことだと思っていたのだけど、どうも TBS ではそうではないらしい。ちょっと調べれば、Benigno Aquino(正確には ,Jr.)→ベニグノ・アキノということ位、すぐに分かりそうなものだ。いや、それ以前に、報道もやってるわけだから、そっちの関係者にでもチェックしてもらえばすぐに分かりそうなものではないか。少なくとも、僕でもすぐに気がつく位なんだから、こんな阿呆な間違いをそのまま放映するなんて、恥ずかしくないのだろうか?教科書がどうこう言ってるんだから、その辺は間違っちゃだめでしょうに……ということで、TBS の web ページをたどってフォームからメールを出しておいたけれど、まあ黙殺されるんだろうな。

なんか最近、テレビのこの手の番組でも、どうもこういう詰めが甘いものが多い。こういうところがいい加減だと、面白くなくなってしまうんだけどなあ。あーやだやだ。

Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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