拙ブログ『シャツを買うのは憂鬱』で書いた通り、僕は腕が長くてシャツのサイズに苦労する。とりあえず、ユニクロで特殊サイズのシャツがあるということを知り、このエントリーを書くのと同時に、試しに2枚程注文してみたのだった。
amazon 程ではないにせよ、ユニクロだったらそう時間もかからないだろう……と思っていたわけだ。しかし、待てども待てども発送通知は来ない。うーん……今週は人と会う機会が多いので、早速着て試してみたかったんだが。で、金曜の夜。ようやく発送通知が届いたのだった。
土曜になって、ようやく品が届いた。早速洗濯をして(僕はこの手の商品のノリに弱いので)、乾いたところでフィッティングすると……よしよし。やはり袖の長さがちゃんとしていて、首が苦しくもなく、ブカブカでもない、というのはいいものだ。月曜から、早速仕事にも着ていくことにしよう。
最近、仕事の中身がちょっと変わって、管理やら何やらというのがどかっと増えた。当然、今迄感じなかった疲労を感じるようになってきて、日々、それを緩和するのに苦労しているわけだ。
まず腰。以前から、疲労が溜ると腰に来る、という兆候はあったのだけど、最近は毎日違和感を感じている。あーこれはあともう少しロードがかかったらいっちゃうなあ……という感じである。人が見ていないところで、腰に手を当ててのびをしたりするわけだけど、それ位ではもうどうにもならない。
肩凝りは前からひどかったのだけど、最近は更にそれに輪をかけてひどい状況である。もう、少し揉んだりした位ではどうにもならない。その疲労は背筋を伝って、やがて腰につながる。上の方でも首筋の凝りとつながる。こうなってくると、もう疲れていない場所を探す方に苦労する位の感じになってくる。そして、どういう訳か、足の裏……土踏まずの辺りが痛くなってくるのだ。
足の裏の痛みがどうしようもないので、トクホンを買って貼ってみた。すると……うん、楽になったような気がするなあ。これは足が全身とつながっている、とかいうわけではなくて、凝りを緩和するために必要な弛緩につながるということなのだろう。しかし、これでも辛いことには変わりがないので、「キューピーコーワゴールドαプラス」とかいうのを買って飲んでいる。これは確かに凝りに効くのだけど、毎日この手のクスリを飲んでいて大丈夫なのだろうか……
この歳になると、さすがに人前に出るときにすり切れたシャツにジーンズ、というわけにもいかないことがあるので、カタギな勤め人程ではないにせよ、タイを締められるシャツを着ることが多い。で、主戦力だったシャツがちょっと傷んできたこともあって、何枚か買うことにしたのだけど、これが僕にはどうしようもなく憂鬱なのだ。
いわゆる紳士服店に行ったとしよう。エビス顔で寄ってきた店員に挨拶されて、シャツを買いたいんだけど、と言うと、当店は数多く揃えておりますので、と胸を張られる。何言ってるんだかなあ、と思いつつ、採寸を頼むと、エビス顔のままでメジャーを取り出し、首、肩、腕と当てて……そしてエビス顔が消える。眉間に皺を寄せて、うーん、と唸りながら、運が良くてもセール品と遠いところにある棚、運が悪ければバックヤードに店員は消え、何分か待たされた後に、済まなさそうな顔をしながら、包装のビニールがやや埃っぽい、最近あまり光が当たっていないような品を手にして返ってくる。すみませんが、当店の在庫ではこれだけでして……最初の自信はどこへやら、だ。
どういうことかと言うと、僕は首回りに対して腕がかなり長いのだ。だから、いわゆるワゴンセールの品を買おうとすると、腕がつんつるてんか、首がガバガバか……のどちらかになってしまう。当然、サイズを合わせると高くつく。だから、シャツを買うというのは僕にとって憂鬱なイベントなのだ。
最近は、たとえばユニクロでも僕のような「特殊サイズ」に対応しているのだけど、店頭では当然そういう商品にアクセスできない。だから通販ということになるのだけど、今回はシャツの製造元の運営するサイトをいくつか覗いてみて、一番安そうなものを探してみる……結論として、一番安いのはユニクロなのであった。 なんだかなあ。どうして僕は、何もかもこう世間の標準とずれているんだろう。まあ、何から何まで平均で、それが当然保証されていることだと信じて疑わずに、傲慢に生きていく位だったら、今の自分の方がナンボもましだと思うけどね。
夜、ふと自分の好きなミュージシャンに関して、英語版の Wikipedia などを読んでみることがあるのだが、思わぬことが書かれていて衝撃を受けたり、知っていることでも改めて読んでやはり衝撃を受けたりすることがあったりする。
たとえば、Marvin Gaye とのデュエットで有名な Tammi Terrell という人がいる。二人の最初のアルバムである United は、背景を何も知らないときに中古盤を買って、一曲目の "Ain't No Mountain High Enough" のベースラインに完全にやられてしまったのだけど、Tammi Terrell が脳腫瘍で亡くなった、ということだけは知っていた。しかし、英語で情報を漁ってみると、その晩年の過酷さに、息の止まる思いがしたものだ。
彼女は、1967年、バージニア州のハンプデン・シドニー・カレッジにおけるステージ上で突然倒れた。Marvin がとっさに抱きとめたのだそうだが、そのときの診断で悪性腫瘍が右脳にあることが判明する。彼女は幼少時から頭痛持ちで(この辺りは、連合赤軍の永田洋子と重なる話である)、どうもそれもこの腫瘍と関係があったようなのだけど、このときから、1970年に亡くなるまで、なんと合計9回もの手術を受けているのだそうな。まだ CT も MRI も、鍵穴手術なんてのも間違いなく存在しなかった時代である。これが彼女にどれだけのダメージを与えたかは想像に難くない。
もっと後の時代のミュージシャンでも、衝撃を受ける話というのはいくつもある。たとえば、僕の大好きな Donny Hathaway だけど、彼は今で言う妄想型統合失調症を患っていたという。統合失調症自体は、罹患率をみると人口比で 1 % 弱というから、実は結構ありふれた病だといえるようなのだけど、彼の死の直前、Roberta Flack とのデュエットアルバムのレコーディングを行っていた時期、彼は「白い連中」に関する話をしていたのだ、という、何でも、「白い連中」は、彼を殺し、その脳を機械に接続して彼の楽曲とサウンドを盗もうとしている、と彼は話していたらしい。彼の言動から、セッションをこれ以上続けられない、と判断したスタッフがその日のセッションを中止して程なく、彼はエセックス・ハウス・ホテルの15階の窓から飛び降りてしまったのだ。
どういう訳か、そういう document に僕が行き着くのは決まって真夜中だ。どうも精神衛生上好ましくないと思うのだけど、25歳の誕生日を目前にして亡くなった Tammi と、33歳で亡くなった Donny より、僕はもう10年も20年も長く生きている癖に、この世に残していけそうなものはあまりに少ない。それが尚更に僕に衝撃を与えるのだ。不惑を過ぎていても、惑わぬには本当に程遠い。