sound example
ちょうど今、また曲を書いている(というか録音しているというか)ところなのだけど、前々から導入しようと思っていたエフェクトを入れることにした。これは Impulse Response Reverb というもので、これを使うと、僕のようにデジタルベースで制作をしている人間でも、たとえば EMT-140 のようなリバーブ(本物は畳位の大きさの鉄板を使っているので、とてもじゃないけど家に置くなんて無理な相談だ)の残響特性をシミュレートして使うことができる。
ただ、このシミュレートを行うためには、その名の通りインパルス応答を記録したサウンドファイルが必要になる。このファイルは売り物のものもあるのだけど、ありがたいことに free で配布してくれているサイトが何か所かあるので、そういうところから(僕の場合だと EMT のリバーブ、それにレキシコンの 480L とかの)ファイルを落としてくれば使えるわけだ。
まあ、こんな話はどうでもいい(というか、ここ読まれてる方にはあまり縁のない話だと思うので)のだけど、その配布サイトのひとつで公開されてるファイルをたまたま聞いたら爆笑してしまったのだった。そのサイトは 1111 というサイトで、こんな風にアーカイブを公開している:
http://www.1-1-1-1.net/pages/impulses/index.htm
で、何に爆笑したか、というと、このサイトで公開しているアーカイブを使ってエフェクトかけたらこんなんなりますよ、という example の MP3 file である。以下、その一例にリンクしておく:
このサイトのオーナー、Emmanuel Deruty って人らしいんだけど、一体どこでこれを探してきたのだろうか?
ワウ・無間地獄
2009年3月26日の日記に書いたけれど、僕はちょっと前の VOX V847 を持っていて、内部回路はイタリア製の VOX V846 と同じ特性になるように自分で作り替えてある(石もインダクタもコンデンサもモノはオリジナルと違うけれど)。僕はジミヘンやスティーヴィー・レイ・ヴォーン(でも彼が亡くなった日は覚えている……僕の誕生日だったからだが)のフォロワーというわけではない(好きだし結構よく聴く……意外に思われそうだな……のだけど)のだが、なにせ一般的なワウ(と言っていいのか?)は僕はこれしか使ったことがない。VOX は踏みしろが少ないから大変でしょうとか、色々言われることは多いのだけど、いいんですおそらく一生これ使うから。ちなみにワウはもうひとつ、BOSS PW-1(ロッカーワウ……ペダルにホール素子を使っていてガリが出ない)を持っている(これも実は隠れた名器だと思う)のだけど、やはり VOX のワウの方をよく触っている、というか、踏んでいる。
最近のミュージシャンで、ワウのプレイが上手いよなぁ、と思うのは、やはり誰が何と言おうともスガシカオなのだけど、彼は Ibanez WF10 を使っているそうな(ちなみにレッチリのジョン・フルシアンテも姉妹機の Ibanez WH10 を使っているそうで、そのためかこれらは中古相場で法外な値段がついているらしい……昔は貧者の友みたいな扱いだったのに)。意外にもスガ氏は普通はテレキャスをこの WF10 に通して、フルテンのミニアンプに突っ込んで弾いているんだそうな。だからまあ、ワウも人の好み次第であって、出す/録る音が良ければ何でもありなわけだけど。
で、標記の件に戻るけれど、このワウというエフェクターは、ペダルの踏み込みをラック & ピニオンでポテンショメータ(可変抵抗器)の回転に変えてやって、ワウの音色変化をコントロールしている(僕の二台目のワウ BOSS PW-1 の場合は、本体上部のセンサでペダル裏面に貼りつけられた磁石との距離を検出して同じことをしている)のだけど、ポテンショメータの回転角度は、ラックの全ての歯数より多くなっている(でないとポテンショメータが壊れてしまう)。だから、この噛合わせを、ワウが開いた方に寄せたり、逆に閉じた方に寄せたりすることができるのだけど、これをどうセッティングするかで、踏んだときの感じが変わってくるし、いわゆる「美味しい部分」を有効に使えるかどうかも決まってしまう。
で、このワウを手に入れてから一年の間、どうもしっくりこないなー、と思っていたのを、先日ちょこっと修正したら、なんだか今までより「美味しいところ」が使いにくくなってしまった。で、裏蓋を外した状態で、ちょっとずらしては踏み、またずらしては踏み……という無間地獄に陥っていたのだけど、これが、実は昨日ようやく解決したのである。いやー嬉しいなあ、と、まるで猿のように(?)踏んでいたりする。うーむ、面白い。でも、自作の曲等に使う機会が実は今までまるでなかったんだなあ。一体いつ使うのだろうか……ぉぃ。
ストラトの音作り
昨日の日記にリンクしたのは、暑さで何だか厭になって、スッキリした曲を作りたくなって試作したものである。ああいう断片が僕の HDD にはたくさん入っていて、それが膨らむときにはそれが完全な曲になるし、膨らまないときはそのままになるわけだ。
で、あのデモで弾いているギターはストラトである。僕はカッティングのときにはほぼ必ずテレキャスターを使うのだけど、今回はちょっと思うところがあってストラトを使った。その話を今日は書こうと思う。
テレキャスにはピックアップが二つついている。ネックに近い方をフロント、ブリッジに近い方をリアという。各々のピックアップの出力は 3 way selector で切り替えられるが、3 way の名の通り、selector を真ん中にすると、フロントとリアの出力をミックスした出力が得られる。このとき、二つのピックアップが拾っているノイズが相殺されるようにミックスされている。
ストラトキャスターにはピックアップが三つついている。ネックに近い方をフロント、ブリッジに近い方をリア、そしてその中間にあるものをミドルという。各々のピックアップの出力は 5 way selector で切り替えられるが、5 way の名の通り、selector で二つの隣接するピックアップの出力をミックスした出力が得られる。二つのピックアップが拾っているノイズが相殺されるようにミックスされているのは、テレキャスターと同じだ。
……などと書いていても、ギターを弾かない人にはさっぱり分からないかもしれないので、以下に各ポジションで弾いた生音を挙げておこう:
- Telecaster Rear
- Telecaster Rear - Front Mix
- Telecaster Front
- Stratocaster Rear
- Stratocaster Rear - Middle Mix
- Stratocaster Middle
- Stratocaster Middle - Front Mix
- Stratocaster Front
さて、では、普段僕がこれらをどう使い分けているのか、だけど、実はテレキャスターの場合、9割方は (2) Telecaster Rear - Front Mix を使っている。カントリーとか、あるいはジミー・ペイジのように歪ませて使う人は (1) のリアを使うことが多いと思う。ちょっとジャズっぽいプレイをする人は、ひょっとすると (3) のフロントを使うかもしれない。ただし、もともとテレキャスターのフロントピックアップは、ギターをベースの代用として使うために追加されたものなので、(3) を常用する人はあまりいないかもしれない。僕のように歪ませずカッティングメインで使う場合は、selector を動かすことはほとんどないと言ってもいいだろう。
ではストラトでは……と、これが問題だったのだ。僕は普段は専ら (5) Stratocaster Rear - Middle Mix を使っていたのだけど、他のポジションを有効に活用できていなかった。うーん、なんだかなあ、と思いつつ、昨日の録音をしていたのだった。
自分でアレンジをして、あれを録音していたわけだけど、時間はトータルで2時間程度しかかけられない。うーん、カッティングにストラト使ってみよう、でもからっとした感じにするのに、どうするのがいいのかなあ、と考えていたときに、そう言えば今回のアレンジ、大貫妙子の『夏に恋する女たち』に似てきたな、と思ったのだった。
『夏に恋する女たち』は、大貫妙子の "SIGNIFIE"(シニフィエ……あーそーか、いわゆるニューアカデミズムの華やかなりし頃の名残、かな)に収録されている。たしかドラムは坂本龍一が叩いている(と書くと意外に思われるかもしれないけれど、『い・け・な・いルージュマジック』とかでも叩いている)のだけど、ギターは確か大村憲司だったはずだ。大村憲司と言えば天下無双のストラト使い……というわけで、納戸の奥をごそごそやって聴いてみると……あー、これリアで弾いてるっぽいなあ。
家でギターを録音するのに、アンプを鳴らすわけにはいかないから、僕はほぼ 100 % ラインで録音をするのだけど、こういうこともあろうかと、ちょっと前にギターやベースは自作の真空管プリアンプを通すようにしてある。このアンプは少しだけだけどオーバードライブできるようになっているのだけど、今回はリアで、歪むか歪まないか、のぎりぎりのところにセッティングする。もう少しゲインを上げると、いわゆる「クランチ」になるのだけど、この辺りのセッティングを今まで追求していなかった。弾いてみると……あー、ストラトってこうやって使うんだ。これも自作の BOSS OD-1 のクローンを突っ込んでみると……そうかそうか、こうやって音を作ればいいわけね。ようやく納得できた。で、録音したのが、昨日のあれだった、という次第だ。
……と、なんだか軽音の高校生みたいな話だけど、今までほとんど歪ものを弾いていない僕は、ようやくストラトと真空管プリと OD-1 で音のバリエーションを整えることができるようになったのだった。