Snuff Garrett

この何日か、麻薬絡みの話、ネット詐欺の話……どうにも嫌なことに触れてきたので、精神的によろしくない状態になっているような気がする。こういうときは……これこれ。Snuff Garrettだよ。

Snuff Garrett は、アメリカの有名な音楽プロデューサーである。この人はちょっと変わった立ち位置の人で、もともと DJ からプロデューサー業に移行したというキャリアも関係しているのか、自身では曲を書かない。ではどうするか、というと、音楽出版社から買ってくるのだけど、そのセンスと、完成品を構築する上でのセンスが非常によろしい。彼のキャリアの中で今に至るまで最も聴き継がれているのは、おそらくGary Lewis and the Playboysの作品群だと思うのだけど、たとえばこんなのを聴いていただくと、雰囲気がお分かりになりやすいかもしれない:

この "Everybody Loves a Clown" は、冒頭部のコード進行が大滝詠一の『君は天然色』と同じであることから、『君は……』の元ネタだと世間では言われているらしい。何でも何でも元ネタ元ネタだ、と、実に下らん話だと思うけれど、少なくともこの曲に代表されるような、グロッケンシュピールやヴィブラフォン、ウインドチャイムなどの「金モノ」、そしてハープシコードを上手く使った明るい曲調を、大滝氏が意識していたことは間違いないだろう。

そして、世間ではおそらくこちらの方がインパクトが大きいかもしれない:

この曲は同じく Gary Lewis and the Playboys の "Count Me In" という曲だけど、ピアノのオクターブのフレーズやフィルが、大滝氏の作品に色濃く影響を与えている。……いや、皆さん、それ以前に何か思い当たりません?これですよ:

この iPod nano の CM ソング、どう聴いても "Count Me In" のパクリだと思うんだけど。どうなんでしょうね、一体。

MDMA、コカイン、そして覚せい剤

今週、この blog で以前に書いた「『なぜ覚せい剤を使ってはいけないのか』再掲」、そして「なぜエクスタシー (MDMA) を使ってはいけないのか」へのアクセスが激増した。おそらく押尾学被告の事件と、田代まさし容疑者のコカイン所持事件のせいだろうけれど、それにしてもこのアクセスはちょっと多すぎる。

押尾学被告の事案に関しては、特に何も言うべきことはない。残念だけど、あれは同情の余地がない。実刑を避けるために、逮捕・勾留された後もあそこまで争う……というのも、おそらく彼の中に「日本じゃなければこんな大事にならなかった、自分じゃなくて日本の体制が悪いんだ」という思いが強くあるからなんじゃないかと思う。上リンク先で僕が書いた危険性など、おそらく(自分の身体が関わらない限りは)軽く軽く考えていたに違いあるまい。

そして、田代まさし容疑者の一件。これに関しては、「やっちゃいけないものをやった奴が悪い」と、簡単に切り捨てる気には、とてもじゃないけれどなれそうもない。今日はこちらの話を書こうかと思う。

2回目の覚せい剤での逮捕、そして実刑を終えて、社会に出てきた田代まさし氏は、誰の目から見ても明らかに衰えていた。特に目立ったのは、ややろれつが回らなくなった喋りで、おそらくこれは彼をひどく苦しめたに違いない。ニコニコ動画の生放送、そしてコミュニティFMへの出演等、ようやく糊口を凌ぐ術を得つつあっても、そこで喋っている彼はひどく苦しそうに見えた。ろれつが回らない口調でも、テンションを上げて面白いことを言わなければならない。そして、自分の薬物歴に関するツッコミに対してもうまくリアクションを返さなけれなならない。これはおそらく、彼にとってはひどく辛いことだったと思う。

ネットサイトでのインタビューで、彼は出所後メンタルなケアを受けていない、と語っていた。僕はこれが非常に気にかかっていた。覚せい剤を常用していた人は、やめた後も抑うつ状態を抱えて生きていくことになる。時にはフラッシュバックもあるかもしれない。そのような状態を少しでも改善させるためには、うつ病に対して行うのと同じような、精神科での薬物治療を受けることが望ましい。現在主流になっている SNRI や SSRI、あるいは NaSSA と呼ばれる新世代の抗うつ薬は、副作用も軽く、特に NaSSA に関しては睡眠状態を改善する効果が高いことが知られているから、このような薬剤の適切な処方を受けていれば、きっと彼はもう少し生きやすくなれたのではないか、と思うのだ。

僕は別に彼のファンというわけではない。でも、ドゥーワップが好きな者としては、ラッツ&スターをもう観られなくなるのか、と思うと、ただただ哀しい。田代氏には、どうか音楽の方だけを向いて生きていってほしかった。お笑いで飯を食うのはそれはそれで何も問題ない。でも人は、絶望の底にいるときには、たとえ他人から見てそれがドブネズミと星程に離れていても、高い空の星を見上げていなければ、流されて、そして潰れてしまうのだ。クスリを使っている連中と交流を持って、秘密を共有する関係を結び、お笑いでアップになることを求められるときにコカインを使う。絶望の果てにある「もういいや」という声が聞こえそうな、こんな状況に陥らず、どうしようもなく孤独でも夢をつないでいくためには、まずはドブネズミ (rats) の一匹として、音楽という星 (star) を見上げていて欲しかったのだが。

そして、彼のような人々がクスリの連鎖に捕らわれないような社会的プログラムが、もうこの時代には必要なのだということを、今回の事件は示している。先に僕が書いたようなメンタルケアに加え、現在ダルクが行っているような、薬物に依存しないで生きて行けるような他者との関係の構築、そしてやはり経済的支援が、一体として、田代氏のような薬物常用者に対して行われるべきであろう。これなしでは、「もう社会に復帰できない」という絶望の中でクスリに手を出す人は減らないのだ。社会はもはや、こういう経済的負担を負わなければならない時代に至っていることを、僕達は認識しなければならないのだろう。

「つながり」という名の欺瞞

世間で多くの人が利用しているmixiを、僕も利用しているわけだけど、最近はメリットよりもデメリットの方が多くて、正直言って自分の消息周知のためだけに入っている、と言う感じである。分からないことを mixi で質問する、ということもまずないし、質問に答えるときも最近は「傲慢な質問者」が多数派というお寒い現状なので、まともに答えることも少なくなっているからだ。現在全国ツアー中の山下達郎関連のコミュニティにも入っているけれど、僕は基本的に何か好きなものがあっても、そのファンには嫌悪感しか抱けないことが多くて、そこでアクティブにどうのこうのしているわけでもない。

で、だ。その山下達郎のコミュニティで、行けなくなったコンサートのチケットをファン同士で有効活用するために立てられているスレッドがあるのだが、そこで今日詐欺事件が発生したらしい。まあよくある話で、チケット代金を銀行に振り込ませて後は知らんぷり、みたいな状態らしい。僕も前回の山下氏のツアーはこのスレッドでチケットを譲っていただいて行ったのだけど、そのときは相手を知っていた(コミュニティ内での発言履歴等から)ので、このようなことには巻き込まれなかった。

そもそも、山下達郎のライブチケットは取りづらいことで有名なのだ。ホームグラウンドである東京、それも中野サンプラザともなると、電話に張り付いていてもなかなか難しい。そんな中野サンプラザ、それも前から5列目のチケットをペアで、という話は、どうも怪しいんじゃないのこれ?と思わざるをえないのだが、行きたくて行きたくて、でもチケットを入手できなかった人、だと思うのだが、既に振込を済ませてしまった人がいるらしい。

で、たまたま時間があったので、その容疑者とされる人物が何者なのか、プロフィールを観に行った。群馬県在住♂26歳、3月01日生まれ、血液型A、趣味が映画鑑賞、スポーツ観戦,、音楽鑑賞、カラオケ・バンド、料理、グルメ、お酒、ショッピング、職業が営業・企画系……とある。まあ無難な感じだ。

そして、おそらく引っかかった人がこれで信用してしまったのではないか、と思われるのが「マイミクシィ」の数だ。その数、49人。これだけの数の人と「つながり」を持っているならば、大丈夫だろう……そう思ってしまったのではないかと思う。

mixi が CM などで盛んに連呼している「つながろう」というキーワードだが、確かにこれだけを見たら共同体として意義深いもののように思われるのかもしれない。しかし、ネットワーク上でのつながり、と言っても、所詮は手続きとしての相互認証で、往々にしてその認証は極めていい加減なものに過ぎない。それはまさに、「つながり」という名の欺瞞に過ぎないのだ。

今回の容疑者に関して、容疑者のマイミクシィのプロフィールをチェックして、彼らがどのようなコミュニティに登録しているかを調べてみたところ、9割近くのアカウント(具体的には、所属コミュニティの非公開、あるいはアクセス制限をかけているユーザを除いて、46人中42人)が、「マイミクシィー拒否しません!」というコミュニティに登録しているのだ。要するに、この容疑者はマイミクの数を水増しし、多数の人と「つながっている」状態を形成して見かけ上の信頼度を上げるべく、「マイミクシィー拒否しません!」コミュ登録者に集中してマイミク申請を行った可能性が濃厚であり、このようなことで容易く水増しされるような、mixi における「つながり」の相互認証というものは、はなっから幻想に過ぎない、ということである。

mixi 上では、何を勘違いしたのか、僕の書き込みに対して的外れな否定の書き込みをしてきたり、「こんな書き込みはここの趣旨に反する」などという書き込みがなされたりしたけれど、どういうわけか僕が反論すると、再反論も謝罪もないままに、皆さん書き込みを消すんだなこれが。間違ったら消せばいいわけ?そうじゃないでしょう。間違ったら、間違った部分を残して「この部分は間違いでした」って訂正しなきゃダメでしょうが。別にその後に「すみません」とか「ごめんなさい」とか書く必要はないけどさ。まあこんな風に「消してしまえば間違えなかったことになる」とか考えてる連中は、きっと今回の一件から何も学ぶことなどできないんだろう。

そもそも、だ……たしか、山下氏のファンクラブから、この手のチケット交換はご遠慮下さい、というお願いが出てたはずなんだけどなあ。きっと前回も、そして今後も、この手のトラブルは続くに違いない。メディアは進化しても、人が進化しないからだ。進化どころか、馬鹿が大手を振って自己主張してるんだから始末が悪い。つくづく愚かな話である。

恐るべし JWord

Kaspersky Internet Security 2011 を導入してから、Windows Time サービスがうまく機能しなくなっていることに気づいた。Windows Time サービスというのは、SNTP プロトコルを用いて時計合わせを行う機能なのだが、時計が常に正確でないと、セキュリティ上好ましくない状態になってしまうので、この時計合わせはどうにかして行う必要がある。

たかが時計くらい……などと思われる方がいるのかもしれないが、セキュリティ上、この時計情報というのは実に重要である。何らかのアタックを受けたとき、対外的にアタックを受けたことを主張し、他のコンピュータのログなどと付きあわせて事実を証明するときに、時計情報が狂っていたら、相互検証ができなくなってしまう。OS の時計情報は、人間が現在時刻を知るためだけにあるものではないのだ。

Windows Time が使えない原因として、Kaspersky が、NTP/SNTP の通信に用いている UDP 123番ポートを塞いでいる可能性も考えられた…… NTP のセキュリティホールを突くアタックの例が、過去に報告されていることを考えると、まるっきり可能性のない話でもない。しかし、少なくとも、Kaspersky Internet Security 2010 が動いていたときには Windows Time が正常に稼働していたことを考えると、どうもこれが原因ではなさそうな気もする。とりあえず、あまり頭のよくない方法だけど、他の NTP/SNTP を利用したアプリケーションで時間情報の取得ができないかどうか試してみればいいだろう、ということで、Windows Vista 上でも動作する NTP/SNTP クライアントを探した。昔の NT の時代だったら「桜時計」というシンプルなアプリが存在したのだが、現在使えるものでは……と探すと、「i ネッ時計」なるアプリケーション(後述するが、このソフトはある理由から導入をお薦めできないので、これをお読みの方は導入されないよう)を発見した。とりあえずこれを使ってみることにして、アーカイブをダウンロードした。

普段は、このようなフリーソフトをインストールする際には、それなりに注意して作業を行っているのだけど、たまたま他にしていたことがあって、そちらに気をとられながらインストール作業を行っていた。で、本体のインストール時に「JWord プラグインをインストールしますか?」という問にうっかり「はい」と入力してしまったのだった。あー、しまったなあ、と思いつつも、まずは「i ネッ時計」の動作を確認する。

「i ネッ時計」は、ネット上の document には NTP サーバとしても動作すると書かれているのだけど、親サーバからの時刻取得には SNTP プロトコルを用いているようだ。しかも、現時点での日本の public な NTP サーバのリストが入っていて、1回ごとに親サーバを換えながら時刻取得を行うようになっている。福岡大の GPS を用いた NTP サーバが過負荷で問題になっていた頃ならばともかく、「インターネットマルチフィード(MFEED) 時刻情報提供サービス for Public」や「NICT 公開 NTP サービス」がある現在、このような機能はあまり意味がない。そんなことよりも、ネットワーク伝送で発生する誤差を統計的に推定・除去してくれる pure な NTP を実装してくれる方が余程有り難いのだけど……まあ、とりあえず、ntp.jst.mfeed.ad.jp からも ntp.nict.jp からも時刻情報を問題なく取得することができた。つまり、Windows Time の不調の原因は Kaspersky ではない、ということである。

さて、では……さっき入ってしまった JWord を除去しよう……と、アンインストールを試みるが、うまくアンインストールできない。おかしいなあ、と思いつつアンインストール時に実行されるファイルをチェックしてみると、system32 内のバイナリに変な要求を出すようになっている。こんなのあまり見かけないんだけど……何だ、これぁ?とりあえず JWord の配布元である www.jword.jp にアクセスしようとするが……ん?アクセスできないぞ。どういうこと?

Wikipedia における JWord の解説を読んでみて、ここまでタチの悪いシロモノだということを初めて知ったのだった。そもそも僕は、今まで JWord をインストールしたことが一度もない。こういううざったいシロモノは常に排除するのが僕の流儀だからだけど、うっかりで入れてしまったただ一度が、今回のこのときだったのである。これは、参った……

とりあえず、JWord プラグインが一部だけインストールされた状態になっていることは分かった。こうなると、もう一度 JWord プラグインを完全インストールしてからアンインストールを行わなければならないのだけど、そのインストーラーの配布元である JWord のサイトにアクセスしようとしてもできないのだ。チェックを注意深く行った結果明らかになったのは、

  • Google Chrome は jword.jp へのアクセスを禁止する仕様になっている
  • Kaspersky Internet Security 2011 は jword.jp へのアクセスを禁止している
ということだった。しかし、JWord プラグインのインストールなしには、除去の作業は困難を極めそうだ。そこで僕は、おぞましい作業を行うことになったのだった。それは、
  1. JWord プラグインのインストーラ(上書きインストール可能)の URL を確認
  2. Internet Explorer を起動
  3. Kaspersky Internet Security 2011 を落とす
  4. JWord プラグインをダウンロード
  5. Kaspersky Internet Security 2011 を再起動、ウイルスチェックを行う
……というものである。Linux でリブートすればもう少し安全に作業できるのだけど、とにかく僕は一刻も早く、この忌まわしい JWord プラグインを消してしまいたかったのだ。

かくして Jword プラグインはアンインストールできた。妙な DLL が残っている可能性が高いので、後でそれらを除去しておかなければならないが、まあ山は越せたわけだ。しかし……それにしても忌々しいのが「i ネッ時計」である。この手のソフトのインストーラに JWord プラグインのインストーラが忍ばせてあるのは、どうやらアフィリエイト目当てらしいのだけど、そんなものを紛れ込ませているようなソフトなんか、使い続ける気にはとてもじゃないけどなれやしない。

「i ネッ時計」は、かくしてアンインストールしてしまった。勿論、このままでは時計の問題がそのままになってしまうので、コマンドラインから、

net time /setsntp:ntp.nict.jp
と入力して、明示的に Windows Time の SNTP サーバを指定してやる。サービスの一覧をチェックして、Windows Time が起動していることを確認してから、時計のプロパティで手動の時刻更新をしてみると……うん、ちゃんと時刻情報を取得できるようになった。

……と思っていたのだが、よくよくチェックしてみると、Windows Time サービスは、ドメインユーザでない場合には、なんとデフォルトの更新周期が1週間!ということに気づく。おいおい、そりゃあんまりだろう……ということで、@IT の解説ページを参考にしてレジストリを編集。しかしなあ……勘弁してくれよ。これが Mac OS X だったら、普通ーに ntpd が走ってて、/etc/ntp.conf を編集するだけでどうとでもできるのにさ。カトラーには悪いけれど、本当に Windows はクソだぜ

それにしても、JWord がこれほどまでに忌み嫌われているとは思わなかった。ソフトベンダーがアホな販促活動をするとこうなる、ということなのだろうか……いやはや。

Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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