悪意の矛先
週刊少年ジャンプ(集英社)の人気漫画「黒子のバスケ」を巡る脅迫事件で、警視庁は15日、上智大(東京都千代田区)に硫化水素入り容器を置いたとして、大阪市東成区大今里西、職業不詳渡辺博史容疑者(36)を威力業務妨害容疑で逮捕した。
容疑を認め、これまでに数百通の脅迫文を送ったことや、毒物のニコチンをキャラクター関連菓子に入れ、コンビニ店に置いたことも認めている。
発表では、渡辺容疑者は昨年10月12日、「黒子のバスケ」の作者、藤巻忠俊さんの出身校である上智大の四谷キャンパスの体育館に、「喪服の死神」を名乗る犯行声明文と硫化水素入り容器を置き、大学職員らに校内の警戒をさせるなどして大学の業務を妨害した疑い。
渡辺容疑者は藤巻さんと面識がなく、調べに「バスケット漫画で成功していることをやっかんだ。1人でやった」と供述している。
「黒子のバスケ」を巡っては、上智大での事件以降、作品関連のイベント会場や関連商品を扱うコンビニ店、マスコミ各社などに計約400通の脅迫文が届いた。複数のイベントが中止になったほか、一部の商品が撤去された。
同庁の捜査で、ニコチン入りの菓子が置かれた千葉県浦安市のコンビニ店近くの防犯カメラに、不審な動きをする男が映っていたことが判明。この男によく似た渡辺容疑者が15日午後3時頃、東京都渋谷区内のポストに新たな脅迫文を投函しようとしているのを捜査員が見つけ、職務質問したところ、「ごめんなさい。負けました」と話し、一連の脅迫文送付などを認めたという。
(2013年12月16日07時16分 読売新聞)
この『黒子のバスケ』という漫画を僕は読んだことがないのだが、この漫画の作者が執拗な脅迫を受けていたことは知っていた。僕も粘着的な中傷をされたことがあるので、正直言って他人事とは思えない。
僕の場合は、『新しい中傷手法』『新しい中傷手法 (2)』に書いたようなことがあったわけだけど、今に至るまで、これが誰の所業なのかが全く分からない。この中傷がなされたのが、大阪のとあるプロバイダの回線からであることは分かっているし、僕の知人でここのユーザというのがかなり限定されるのだけど、それでも誰がこんな悪意を僕に向けるのか、その人物も悪意の源も、結局何も思い当たるところがなかったのだ。
ひとつだけ確かなことは、人は時として、思いもしないところで悪意を向けられることがある、ということだ。もう十数年も前の話になるけれど、過去の日記に無言電話の話を書いたことがある。このときの電話の主だったのは、高校時代の同期の男だった。
彼とは予備校も同じだったのだけど、彼の方は某私大を出て、スーパーに就職したらしい。この話の頃には、鮮魚売り場で仕事をしていて……という話を人伝てに聞いていた。別に、スーパーの鮮魚売り場で働いていたって、僕の人生と比べて何ら劣等感など感ずるところではないと思うのだけど、彼自身にとってはそれが納得のいかないものだったのかもしれない。だからといって、僕に無言電話をかけたところで、彼は何一つ満たされることはなかったはずだ。そして、最後の最後に声を出してしまい……それ以降の彼の消息を僕は知らない。彼がこのことを忘れていてくれれば、きっとまたにこやかに会えるかもしれないのだが。僕もオッサンになって、こういうことを忘れる術を、少しは身につけてきたと思うのだが。
まあしかし、誰がどんなきっかけで、どのような矛先を向けてくるかは分からない。本当に、こういう矛先を向けられたときにはどうしたら良いものか。最初の方の検索騒動のときなどは、本当に参ったものなあ……