焼け石に水

福島第一原発の冷却に、ヘリでホウ酸水を投下するということが真剣に討議されているのだ、という。メディアでも「切り札」と書いている。いや、でも、ちょっと待ってもらえませんかね?

そもそもヘリにどれ位の重さのものが積めるのか、皆さんご存知なのだろうか?たとえば自衛隊が持っているヘリで最も大型のもの、というと、おそらく CH-47 チヌークだと思うけれど、資料を見てみると、CH-47D の最大積載量は 8 t を少し切る位である。8 t というと、さぞたくさん積めるかのように思われそうだけど、体積にしたらたかだか 8 m3 に過ぎない。

しかも、航空機からの投入、というのは、投入量の全てが有効に炉内、あるいは容器内に入るわけではない。仮に 100 回投入を行ったって、効率 10 %(これだって大甘の予測であるが)で 80 t である。これが有効な方策だと、本気で政府は考えているのだろうか?

これだったら、発電機と燃料を空輸する、あるいはポンプを空輸する方が余程現実的である。何かやれば努力しているかのように見えるかもしれないし、おそらく政府もそれを期待しているのかもしれないけれど、本当に必要なのは有効な対処を行うことであるし、時間もチャンスも限定されているならば、それが最大効率で機能するように考えるのが、政府のお偉方の仕事なのである。それをもし放棄して、大衆に頑張っているように見えることを重視しているのだとすれば、「そんな馬鹿はさっさと死んでくれ」という話である。

苦言

こんな社会情勢だからこそ、あえて苦言を呈さなければならないと思う。僕のような人間だからこそ言うべきだと思っているのだ。

その1。中部以西の人達で「節電しなきゃね」と盛んに言っている方々へ。節電することが悪いことだとは言わない。しかし、中部以西は本質的に周波数が関東とは異なっている。大電力を周波数変換して送電することはエネルギー効率的にも規模的にも厳しい制限があって、現在の時点では既に変換送電のリミット一杯まで西から東への送電が行われている。だから、声高に節電を叫んで、実際に節電が遂行されても、その結果生じた余剰電力が東日本に送られることはない。

その2。大学生等が募金を行っているのを街で散見するが、募金というのはいやしくも人様のお金を預かって渡すべき先に確実に渡すことを求められる行為である。だから、

  1. 自分達が何者なのか
  2. どういう人達のために募金活動を行っているのか
  3. 集めたお金はいつ、どの組織を経由してどこに送るのか
は必ず明示しなければならない。ただ雁首揃えて菓子の空き缶を持って声を上げても、そんな連中は信用できないし、そこに金を入れても何処に行くのか分からないんだったら、「金をここに入れないで、駅の売店の横の募金箱に入れてください」と、横で誰かが言わなきゃならないじゃないか。

その3。何かやってやったつもりになっているだけなら、それは単なるマスターベーションだ、との謗りを免れないだろう。他人の不幸をネタに自己満足に浸るなど、こんな蛮行はないのだ。本当に、本当に、こんな理不尽な話はない。

北米プレート仮説

先ほど、静岡東部を震源とする強い地震があった。このところ、岐阜の高山辺り、富山、そして今回の静岡、と、東日本大震災の震源以外の震源による地震が頻発していて、皆さんも不安な日々をお過ごしのことと思う。

地震の専門家の方々は、やはり憶測でものを言うことができないので明言を避けられているようだが、この一連の地震を地図で見ると、あーなるほど、と思わされる。どういうことかというと、一連の地震(東日本大震災を含む)の震源は、ことごとく北米プレートの辺縁部を震源としているのである。

あいにく僕は地質学に関しては素人同然で、ここで言っていることは現象論的な推論の域を出るものではない。しかしながら、北米プレート辺縁部とその近くにお住まいの方々は、この辺縁部で地震が起こる可能性に関して常に頭に入れておかれることをお薦めする。

プロメーテウス

ちょっとサボっていた referer のチェックをしたら、野原さんのブログからリンクしていただいていたことに気付く。

高田渡の歌というのは『値上げ』のことだと思う。これは有馬敲の詩に高田渡が曲をつけて歌っていたものだが、著作権覚悟で引用する:

値上げは ぜんぜん考えぬ
年内 値上げは考えぬ
当分 値上げはありえない
極力 値上げはおさえたい
今のところ
値上げはみおくりたい
すぐに 値上げを認めない

値上げがある
としても今ではない
なるべく値上げはさけたい
値上げせざるを得ないという
声もあるが
値上げするかどうかは
検討中である
値上げもさけられない
かもしれないが
まだまだ時期が早すぎる

値上げの時期は考えたい
値上げを認めたわけではない
すぐに値上げはしたくない
値上げには消極的であるが
年内 値上げもやむを得ぬ
近く 値上げもやむを得ぬ
値上げもやむを得ぬ
値上げにふみきろう

高田渡らしい、シニカルな歌である。こういうのを「なしくずし」と言うのだろうが、何事か責任を以て言わなければならない立場の人が、情報を小出しにして、確信犯的な「なしくずし」で民意を操作するということは、僕もあってはならないことだと思う。

原子力に関する話をするときに、僕はいつも「プロメーテウスの火」という言葉が頭に浮かぶ。神だけのものであった火を人にもたらしたプロメーテウスは、ゼウスによって山上のとりことされ、生きながら肝臓をハゲタカについばまれ続けるという責め苦に苛まれた。プロメーテウスは不死だったので、ついばまれた肝臓は夜のうちに再生し、翌日またついばまれる。そして死んで解放されることも能わない。まさに地獄の責め苦である。

プロメーテウスが火と共に人にもたらしたとされる知恵で、僕達はどうやって生きていけばいいのか。これはこれから僕等が皆各々の頭の中で考えなければならないことだろうと思うのだ。もはやプロメーテウスの火なしに日々を営むことが出来なくなっている、この日本で。

Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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