『バカの壁』の源流

養老孟司氏の『唯脳論』を読み進めているわけだけど、この中に、おそらくは『バカの壁』の源流になったのはこういうことか、と思わせるくだりがある:

言語を用いれば、相手の考えがある程度わかる。なぜか。それは言語を表出する側と、それを聞いている、あるいは読んでいる側で、似たような脳内過程が生じているからである。言語の場合、その類似の厳密性は数学よりも弱い。したがって、数学はより明確に脳の機能を反映する。あるいは、より基礎的な脳の機能を示す。

もっとも、言語も数学も、ある程度を越えると、理解する人の方が減る。つまり、そうした脳内過程には、個体差を越えるほどの一般性が無い。時代によって、同じ考えの理解度が違ってくるのは、教育、つまり環境の問題に過ぎない。江戸期の人に微積分を教えても、いまの人同様によく、あるいは悪く、理解したであろう。

前にこの blog で、Twitter のアイコンに日の丸を入れている輩をコキおろしたときに、余程癇に障ったのか、「バカの壁」とだけ書いてリンクを張った輩がいたけれど、そう、それこそがバカの壁である。ただし、そういうことだけ書いているというのは、これは自らの脳内過程を表出する術に尽きたのだ、と言われても仕方あるまい。そう、壁があるのは件の輩の脳の内なのである。

書籍、二冊査収

養老孟司氏の『唯脳論』(ちくま学芸文庫)と、『暴走する脳科学――哲学・倫理学からの批判的検討』(河野哲也 著、光文社新書)を査収。

前者は難解だという話が巷で出ていたけれど、全くそのようなことはない。極めて明解に書かれている。解説が脳科学者の澤口俊之氏というのが少し笑える(いや笑っちゃいけないのかね……そう言えば、Wikipedia で彼のセクハラ問題に関する記述が全て抹消されているのはどうしてなんだろうなあ)。

後者は、いくつか読んだ脳科学への哲学・倫理学的考察の中で最も食指を動かされたので査収した。これも例のアルコー延命財団絡みの考察の過程で出会ったのだけど、やはりこういう本は図書館から借りるだけでは物足りない。

壊れて出ない音がある?

先日 sufary から sary に移行した辞書検索システムなのだけど、何の気なしに使っていて、妙な問題に直面している。

インデックスを使っているので、辞書だけで優に 100 M bytes を超える辞書ファイルもタイムラグを気にすることなく使える……のだけど、どういうことなのか、"thin" という単語だけ、ひいても出て来ずにインデックス検索が刺さる(そこで立ち往生する)のである。何故こんなことに?

単語の頭文字のせいなのだろうか、と考え、"thick" をひいてみると、ちゃんと瞬時に辞書の記述が表示される。他の色々な単語で試してみても、どういうわけか "thin" だけひけないのである。辞書ファイルの破損でもあったのか、と思い grep してみたが、"thin" に対応する記述はちゃんと存在している。

まあ普段は thin なんて単語をひくことはまずない(だって……分かりますよね、thin の意味位)のだけど、ふとしたときにこんな現象を発見してしまうと、どうも落ち着かない。英辞郎の最新版である第五版を購入して試してみようか、いやしかしそろそろ第六版出るかもしれないしなあ……と思案に暮れる今日この頃なのであった。

【後記】結局英辞郎の第五版を購入した。届き次第新しい辞書を作成する予定。

sufary から sary へと移行

sdic で英辞郎の辞書検索に用いているインデックス・ユーティリティを sufary から sary に移行した。以下メモ。

sary は Debian GNU/Linux のパッケージに入っているので、apt-get 等でインストールすればよろしい。インデックス作成は、

$ mksary -c UTF-8 eijirou.sdic
のように行えばオーケー。

Emacs 側の設定を抜き書きしておく。


;;;
;;; sdic
;;;
(autoload 'sdic-describe-word "sdic" "search word" t nil)
(global-set-key "\C-cw" 'sdic-describe-word)
(autoload 'sdic-describe-word-at-point "sdic" "カーソル位置の英単語の意味を調べる" t nil)
(global-set-key "\C-cW" 'sdic-describe-word-at-point)

;; ----- sdicが呼ばれたときの設定
(eval-after-load "sdic"
'(progn
;; saryのコマンドをセットする
(setq sdicf-array-command "/usr/bin/sary")
;; sdicファイルのある位置を設定し、arrayコマンドを使用するよう設定(現在のところ英和のみ)
(setq sdic-eiwa-dictionary-list
'((sdicf-client "/usr/local/share/dict/eijirou.sdic"
(strategy array)))
sdic-waei-dictionary-list
'((sdicf-client "/usr/local/share/dict/waeijirou.sdic"
(strategy array))))
;; saryを直接使用できるように sdicf.el 内に定義されているarrayコマンド用関数を強制的に置換
(fset 'sdicf-array-init 'sdicf-common-init)
(fset 'sdicf-array-quit 'sdicf-common-quit)
(fset 'sdicf-array-search
(lambda (sdic pattern &optional case regexp)
(sdicf-array-init sdic)
(if regexp
(signal 'sdicf-invalid-method '(regexp))
(save-excursion
(set-buffer (sdicf-get-buffer sdic))
(delete-region (point-min) (point-max))
(apply 'sdicf-call-process
sdicf-array-command
(sdicf-get-coding-system sdic)
nil t nil
(if case
(list "-i" pattern (sdicf-get-filename sdic))
(list pattern (sdicf-get-filename sdic))))
(goto-char (point-min))
(let (entries)
(while (not (eobp)) (sdicf-search-internal))
(nreverse entries))))))
;; おまけ--辞書バッファ内で移動した時、常にバッファの一行目になるようにする
(defadvice sdic-forward-item (after sdic-forward-item-always-top activate)
(recenter 0))
(defadvice sdic-backward-item (after sdic-backward-item-always-top activate)
(recenter 0))))

(setq sdic-default-coding-system 'utf-8-unix)

Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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